(3)目録技術

 

3.1  1960年代以前 コンピュータ以前 同一品質の手作り品

 

コンピュータ以前の目録は、全国数千、数万、全世界数十万の図書館が、図書を購入すると、各自の図書館が目録を作成した。ほぼ同一の目録が作成できるように、目録の勉強をした専門の人が作成していた。すべて、手作りの一品ものでが、目録規則に従って、作成されるので、隣の図書館、外国の図書館に比べても、同一品質になる。

 

3.2 1960年以降 機械可読データの活用

 

日本中、世界中で、同じ目録を作成しているのだから、それを活用、コピーすることはできないだろうかということになってきた。

 

世界最大規模の図書といえば、アメリカ議会図書館の目録カードを印刷本(ユニオン カタログ)であったといっていいほど、大規模な印刷物であった。

 

1960年代に、MARC技術が完成すると、当時の非力なコンピュータでも、処理できるようになり、全米の図書館が、電話回線とつかって、アクセスするようになった。書誌ユーティリティの登場である。

 

3.3   コンピュータで、日本語を使るようになるためには、さらに、数十年の時間が必要だった。

 

コンピュータで、日本語や漢字を自由に使えるようになるには、1980年代、1990年代まで、時間が必要だった。そのあたりから、日本の図書館システムも本格化し、最初、LCMARC、JPMARCという2つの形式を処理する図書館システムが登場することになった。Windows95 の登場当たりから、インターネットが一般化し始める。

 

3.4 日本の図書館システムは、4つの方向に分裂していった。

 

図書という世界の共通財産を管理するためには、現在、1つの形式 MARC21で統一されているのだが、日本は、その発展によって、分裂して発展することになった。

 

日本では、書誌データをだれが、どのように供給するのか、確立できないまま、混迷していくことになった。

 

(1) LC/JP  大学図書館、初期に考えられた図書館システムで、洋書、和書が、別々の形式で管理された。

  この場合の書誌データは、LCは海外から、JPは、国会図書館などから供給された。

  唯一、LC、JPを日本向けに提供をしたのは、カナダのUTLAS社であったが、NACSISの登場によって、衰退していくことになった。

 

(2) JP/TRC   公共図書館の図書と目録データを一緒に供給するビジネススタイルが確立すると、公共図書館はJP形式で、図書館システムが構築されるようになる。

 

  新規の書誌データは、業者が提供してくれるにしても、すでに購入した図書の書誌データを構築するにあたり、絶大な効果を

表したのは、JBISCであった。国会図書館のデータ遡及にともなって、次々を発行され、日本中の図書館で購入された。

 しかし、JBISCは、CD-ROM、DVDであったため、出版直後、最近の出版物のデータは、収録されていないので、図書館が図書の購入と同時にデータを提供するビジネスが登城することなる。

 

各図書館の遡及が、終了すると、JBISCの購入もおわり、現在、JBISCは、販売はない。

書誌データの供給方法としては、磁気テープがあったが、コンピュータの磁気テープは非常に大きく、装置の大型になるので、大型コンピュータでしか、採用されず、パソコンで利用できたJBISCが好まれた。

 

(3)  NACSIS  NACSISが登場すると、日本の大学図書館の99%が、利用することになり、NACSISフォーマットの図書館システムが登場することになった。NACSISは、書誌の供給と所蔵登録をオンラインで作成するものであった。444

当初の目的は、全国の所蔵情報を一元的に管理するシステムを構築するために、可能の限り簡略化されたシステムが構想された、LCMARC,JPMARCには、数百項目のタグは、再区分コードが存在し、その組み合わせは、無数にありそうなシステムであったが、だれでも簡単に、オンライン画面(当時は、横80文字、縦24行 英字で1920文字)で収まることを前提して考案された。

そのため、LC/JPなどの複雑な区分を排して、可能な限り簡便な目録形式にした。

 大学図書館は、どうせ、所蔵登録をしなければならないのなら、そのデータをそのまま、図書館システムデータにしてしまうことを前提として、図書館システムが登場し、それが、普及することになった。

 

ここでは、大学図書館が抱える過去の図書の書誌データをどこから得るのか。海外の場合、有料で、遡及のためには莫大な費用を必要としたが、NACSISは、無料で入手可能であった。

 

洋書の書誌データは、有料で高価であったし、和書の書誌データを得る方法がほとんどなかった。

 

そのため、日本の大学図書館システムは、海外のMARC21形式に比較して、簡易形式な図書館システムとなり、海外とのデータ互換性が失われている。複雑なMARC21からNACSISには、変換可能だが、NACSISからMARC21へ復元することは、難しい。

 

しかし、和書データは、LC,Google,OCLCなどに存在しているので、海外の図書館が、NACSISの書誌に依存しなくても、あまり困らない状況ににはなっているので、NACSISは、このままでも、よいのかもしれないが、日本の大学図書館が、ガラパゴス状態になっているのは、確かである。

 

(4)  MARC21   世界の図書館の100%は、MARC21形式と思われる。多言語対応して、世界の言語のデータを管理できる。日本では、MARC21形式の図書館システムは、ほぼない。唯一確認されているのは、国会図書館、早稲田大学図書館、慶応大学図書館の3つだけが知られている。日本で開発しているメーカーかないので、いずれも、海外のメーカーのシステムを使用している。

 国会図書館は、国立中央図書館として、世界に、自国で出版した図書情報を世界に提供するという大きな役割と責任感で、日本独自のJP/MARC 和図書システムから、ローマ字の訓令からヘボン式へと、大きく舵をきった。国会図書館で所蔵しているほとんどの書誌データは、OCLCに供給されている。

 早稲田、慶応は、NACSISが登場する時点で、長年の図書館システム(JP/LC)の運用によって、大量のデータの遡及を構築しており、NACSISに舵を切ることはできなかったを思われる。

NACSISに先行して図書館システムの構築、運用をしていた図書館は、NACSISに切り替えるために、データの入れ替えやフォーマット変更する必要があり、そのまま、既存のデータを使うことは難しかった。とくにNACSISは、書誌階層構造のリンクや著者名典拠などを行う必要があり、データが多いとたいへんな作業になった。国立大学で、図書館システムを早くから構築していた筑波大学、大阪大学などは、大規模作業を行った。東京大学は、NACSISの発祥である。

 

まとめ 図書館システムは世界の99%以上は、MARC21というフォーマットで構築されている。

    日本では、MARC21フォーマットは、国会図書館、早稲田大学、慶応大学しかない。(海外との関係の強い小規模大学などにまれに存在する可能性がある。)

 

    日本では、大きく 3つのフォーマットの図書館システムが独自に発展した。

    (1)大学図書館 NACSISフォーマット

    (2)公共図書館、学校図書館 JP/TRC フォーマット

    (3)国会図書館、早稲田大学、慶応大学

    (4)すでに現存するシステムは存在しないと思われるが、JP/LC 共存

 

 

アメリカでは、1960年代に英語の処理が可能なシステムが登場し、図書館システムの在り方、方向性が確定して、そのまま、発展を遂げた。

 

日本では、コンピュータが、漢字を処理できるようになるまで、数十年の時が必要となり、日本語対応の図書館システムの発展が、いろいろな方向に行くことになった。

 

非ローマ字件のアジアでは、日本よりコンピュータ対応がが遅くなり、多言語対応フォーマットが普及しはじめると、独自の図書館システムを開発するより、非常に普及し多言語システム(MARC21)

が、普及することになった、